1.為替の動きは予測できる?
ドルや円などの為替は、輸入や輸出での貿易取引、海外への投資または海外からの投資、投機筋による売買、時には通貨当局による為替介入など、その時の需要と供給によって上がったり、下がったりします。
例えば、円の買い手が円の売り手より多ければ円高に、逆に円の買い手が円の売り手より少なければ円安になります。
それでは、今後為替が円高に動くのか、円安に動くのか、予測することはできないのでしょうか?
答えは、「ある程度は予測できる」です。それは為替の需要と供給の8割を投機筋が握っているからです。そして一部の投機筋の動きが分かるのが、シカゴ通貨IMM先物ポジションです。
2.投機筋の動きをチェックしよう!
IMMポジションを見るのは、外為どっとコムの「IMMポジションについて」がおすすめです。過去数年間の投機筋、実需筋の建て玉をエクセルファイルで提供しています。
ポイントは、投機筋の買い(Long)と売り(Short)の建て玉枚数の変化です。特に買いと売りの枚数が逆転した場合は、トレンドの変化に要注意です。下の表は、過去に円とユーロのトレンド変化が読み取れる具体例です。
①シカゴ通貨先物のトレンド変化 -ドル円-
年月日 | レート | 投機筋 | 実需筋 | ||||
買い | 売り | 差引 | 買い | 売り | 差引 | ||
2015年12月29日 | 119.37 | 45,008 | 62,234 | -17,226 | 131,111 | 96,331 | 34,780 |
2016年01月05日 | 117.57 | 67,471 | 63,368 | 4,103 | 127,747 | 123,204 | 4,543 |
2016年01月12日 | 116.99 | 78,385 | 53,119 | 25,266 | 130,859 | 154,704 | -23,845 |
2016年11月15日 | 110.75 | 67,085 | 46,409 | 20,676 | 81,503 | 88,408 | -6,905 |
2016年11月22日 | 112.07 | 71,183 | 60,283 | 10,900 | 95,166 | 86,202 | 8,964 |
2016年11月29日 | 113.62 | 72,124 | 72,393 | -269 | 108,163 | 83,995 | 24,168 |
円では、2015年12月29日には、買いから売りを引いた差引は-17,226枚でしたが、2016年1月5日には、+4,103枚に逆転しました。この後、これまでの円安の流れが変わり、1ドル120円から110円へ、更に100円へと円高が進みました。
興味深いのは、投機筋だけでなく、実需筋の動きも変化した点です。投機筋とは逆に2015年1月5日に+4,543枚でしたが、2015年1月12日に-23,845枚に逆転しました。
投機筋は現物市場でも先物市場でも売買による為替差益を目的としていますが、実需筋は現物市場でのリスクの相殺や回避を先物市場での目的としているので、基本的には投機筋と実需筋では逆のスタンスを取ります。
(2016年12月14日追記)約1年ぶりに、投機筋、実需筋ともに買いと売りのポジションが逆転しました。
投機筋は、2016年11月29日に差引10,900枚から−269枚、実需筋は2016年11月22日に差引−6,905枚から8,964枚に逆転しています。
米大統領選挙でトランプ候補が勝利して以降、ドル円は、円安ドル高へとトレンドが変化しました。
②シカゴ通貨先物のトレンド変化 -ユーロドル-
年月日 | レート | 投機筋 | 実需筋 | ||||
買い | 売り | 差引 | 買い | 売り | 差引 | ||
2014年5月06日 | 1.3755 | 110,673 | 78,122 | 32,551 | 108,249 | 123,865 | -15,616 |
2014年5月13日 | 1.3698 | 84,383 | 86,558 | -2,175 | 131,889 | 112,028 | 19,871 |
2016年12月6日 | 1.0555 | 123,390 | 237,946 | -114,556 | 246,681 | 120,065 | 126,616 |
ユーロでは、投機筋が2014年5月6日の+32,551枚から2014年5月13日には-2,175枚に逆転し、実需筋は-15,616枚から+19,871枚に逆転しました。そしてこの後、1ユーロ1.3ドルから1.1ドルへとユーロ安が進みました。
(2016年12月14日追記)ユーロドルは、ドル高ユーロ安のトレンドが継続しています。
以上のように、今後の為替変動を予測する上で、シカゴ通貨IMM先物ポジションが参考になることがお分かり頂けると思います。
シカゴ通貨IMM先物ポジションは毎週金曜日の午後3時30分(米国東部時間)に公表されます。土日が休日のサラリーマンの皆さんは、週末に投機筋の動きをチェックして、翌週の取引に備えることをおすすめします。
個人では、自らの力で為替を動かすことはできません。投機筋の動きにうまく乗っかって、FX取引を行いましょう。